高周波誘導加熱
 

共振回路の種類

コイルと被加熱物

サンプル実験で得られたコイル形状には図面がありませんので実物やデータから

コイルの形状を図面化します この時コイルの形状を維持したり微調整が出来るようにコイルの

固定方法を考える必要が有り、被加熱物の温度を考慮して部材を選定しなければなりませんし

装置組込の加熱コイルの場合は更に装置との取り合いを考慮します。

装置設計メーカーと高周波機器メーカーが異なる業者の場合十分なすり合わせが重要です。

1)装置側ワーク受け治具の材料選定

2)コイル周辺の誘導加熱対策

3)ノイズ対策

4)無負荷加熱対策

高周波電源の設計 その1

高周波電源の設計 その2

高周波電源の設計ではパラメータから構成を考えたりブスバーの形状を考えるうえで計算する状況が多いです。

関数電卓を使うのですがよくマイクロやピコ、メガやキロを入力する際に間違えるケースが多く

折角途中まで順調に計算していたのに突然数値が変な桁数をさして残念な事に成ります。

高周波電源はコイルのインダクタンスはマイクロHが多くコンデンサはマイクロFが多いので

計算式を単純化して計算を楽に工夫しています。


1)共振周波数の計算

  25330 = f^2 ✕ C ✕ L

  例えばコンデンサ5μFでインダクタンス10μHなら

  25330 ÷ 5 ÷ 10 = 506.6 で √506.6 = 22.5 → 22.5kHz が共振周波数になります。

2)冷却水の流量計算

  W = 0.07 ✕ S ✕ T

  WはkW、Sは冷却水の流量L/分、Tは差分熱量℃

  例えば10kWを水で冷却する場合に流量5L/分の時、冷却水の温度は?

  10 = 0.07 ✕ 5 ✕ ?℃ なので逆算して ? = 28.57℃

  冷却水の入口温度が10℃なら出口では38.57℃になります。

3)銅の抵抗算出

  RμΩ = √(f/ 3)✕ 1.72μ 

  Rは抵抗値でμΩ・cm

  fは周波数で単位はkHz

  この計算式はLCメータによる実測を元にしている。


intelli-Calcを使うとマイクロやミリなどSI接頭詞を計算式に盛り込むことやΩやHzなど単位も計算式に盛り込めます。基本的な数式を入力しておけば式を構成する項目を答えから逆算する事が簡単にできます。

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装置設計

共振回路の設計

共振部に使うコンデンサは大型の水冷式の物を複数組み合わせてコンデンサ容量を作ります。

電源の容量が10kW〜100kWクラスの共振部はコンデンサも小さく比較的小さくまとまりますので所定の標準筐体に入れ込むことが出来ますが、200kW〜クラスになると

完全に新規の設計になるケースが多くなります。これは

周波数や電流値によって共振時のコイル電圧が共振コンデンサの耐圧以下に成るように

大型コンデンサの組み合わせ耐圧計算を行い無駄のない必要な個数を算出し、出来るだけロスの小さい最短の通電経路で大型コンデンサのレイアウトを設計する必要があり、

大容量電源の共振部設計は非常に困難です。

共振コンデンサ(水冷コンデンサ)

サンプル実験で得られたコイル形状を元に固定方法を検討します





側面固定版

ピッチ調整板

コイルベース板

共振回路には直列共振回路と並列共振回路があります。

直列共振回路はコイルとコンデンサが直列に繋がっている回路で

並列共振回路はコイルとコンデンサが並列に繋がっています。

双方とも共振周波数はf = 1/(2π√(L・C))です。

直列共振では共振点で回路のインピーダンス(抵抗)が理論上0Ωになるのに対し

並列共振回路はインピーダンスが最大になります。

ゆえに直列共振回路では共振点で電流が最大になり並列共振回路では電圧が最大になります。

何れの回路も共振点で電圧位相と電流位相が合致するので負荷に対して最大電力を供給します。

IH電源では電流型共振回路と電圧型共振回路と呼ばれることも有ります。

直列共振回路の方の制御は共振周波数を外れるとインピーダンスが大きくなり電流が流れにくく成るので共振点を外れた時に発振素子に負担が小さく高い周波数でも制御しやすいのですが、電源が大型化すると電流も大きくなるためコイルへの通電が大掛かりになり距離があると通電ロスも大きくなりコスト的に折り合いが付きません。一方の並列共振は電圧形なのでコイルへの通電は同軸ケーブルも選定可能で電源とコイルが遠距離の場合など有利ですが共振点から外れると大電流が流れ発振素子を破壊します そのため制御が難しい高い周波数に向きません。

コイルの形状や周波数、電流などのパラメータから高周波電源装置全体像を考えていきます。

狙いの共振周波数から必要なC(コンデンサ容量)を選定することになります。

高周波電源は机上実験で使われるオシレータと違い共振部の共振周波数で周波数が決まります。

コイルのインダクタンスに合わせ巨大なコンデンサを組み替えて共振周波数を調整します。

コンデンサの組み合わせを考えるのは大変です。

例えばコンデンサ容量1μF、耐圧1000Aの巨大なコンデンサが有ったとします。

コイル電流が1100Aとするとこのコンデンサでは耐圧が足りません。

他に選択がない場合はこのコンデンサを2個直列に繋いだものを2列並列に接続して1μFを作ります。

これで耐圧が2000Aになって使えるように成ります しかしコンデンサが4個になってしまうので大変です。

コンデンサはプリント基板についているような小さなコンデンサと違い1つが20kgも有るような巨大な物なので

装置内のレイアウトも関係して設計は大変です。特殊なコンデンサなので納期もかかります。

これは周波数との関係も大きく周波数を下げたい場合 希望の周波数比の2乗倍のコンデンサ容量が必要です。

例えば3kHzを1kHzに変更する場合 コンデンサ容量は9倍、

10kHzを1kHzにするには100倍のコンデンサ容量が必要です。


 コンデンサとコンデンサをつなぐのはブスバーと呼ばれる銅板です。

ブスバーは双極2枚で構成しますが極間で大きな空間を作ってしまうと漏れ磁束が発生し

筐体が近くにあると漏れ磁束で加熱してしまいます。

場所の制約と取り回しを考慮して極力 極間を狭くする工夫が設計者の腕の見せどころです。

左記の計算式を入力しておけば 簡単に逆算計算が出来ます。

共振周波数に対してL,Cの逆算や

冷却水の流量と出口温度から電力を逆算したりすることが簡単に出来ます。

 
高周波誘導加熱