高周波誘導加熱
 
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Made on a Mac

計算で得られる数値は理想的な状況でのみ成立する数値なのでこれを元に

実際の環境や諸条件を踏まえて加熱コイルの形状や周波数、インバーターの容量を決めていく作業がサンプル実験です。

高周波機器メーカーのサンプル実験を行う部門へ委託します。

事前に実験の担当者と詳細について打ち合わせを行うことになりますが、

その際に加熱の仕様に関して要求仕様として明確化する事が必要です。

要求仕様の内容は極力数値化するべきですがあまり高いハードルとしてしまうと

無駄に高額の装置になってしまいます。

実験の経過とともに仕様の再検討も必要です。


1.加熱目的

    1)乾燥 (樹脂乾燥、塗装乾燥、他)

    2)脱脂 (モーターアマチュアの脱脂、他)

    3)焼嵌め (モーターステーターのケース挿入、ベアリング組み立て、他)

    3)鍛造工程 (プレス前加熱、他)

    4)熱処理工程 (焼入れ、焼戻し、焼鈍、焼ならし)

    5)溶解用途

 6)ろう付け用

2.加熱時間

    1)昇温時間(⊿ 温度/時間)

    2)保温時間

    3)冷却時間(必要な場合)

3.目標温度

    1)キュリー点前、後

    2)溶解温度

    3)温度精度(温度が低いと精度出しは難しいので注意)

4.加熱範囲

    1)全体均一加熱 (溶解、脱脂、他)

    2)部分加熱 (焼入れ、焼嵌め、他)

5.浸透深さ(必要な場合)

6.温度分布

    1)加熱範囲(定量的に図面等で指示)

 2)非加熱範囲(上限温度や時間を定量的に図面等で指示)


加熱が希望通りの効果を得られるか模索しながら加熱実験を繰り返します。

最初に加熱コイルの形状を考えていきます。

溶解用は単に巻線コイルの様な構造で内径や使用する銅管の太さを決めるだけですが脱脂や焼嵌め焼入れなどは加熱したい場所と加熱出来ない場所があり

多様な条件下で効果的に加熱出来る様にコイル形状を考えます。


1.コイルの巻数

        巻数が多いほど被加熱物との結合が良くなり加熱しやすくなりますが、

        反面コイルが大きくなるので対象がコイルと同等の大きさが必要です。

  コイルのインダクタンスは巻数に比例するので共振周波数を同じにしたいならば

  共振コンデンサの変更が必要になります。

2.コイルに使う銅管の太さ

        コイルロスに似合う冷却水の流量が必要なので太いほうが良いのですが

        当然コイルが大きくなります、コイル形状により制約が有ります。

3.磁界制御用フェライトの配置

        フェライトを使うと磁界を集中させることが出来ますが、フェライト自身も

  高周波磁界で発熱しますので冷却が必要です。

  またフェライトは高周波磁界で振動を起こします 固定方法が難しい問題です。

4.冷却水接続ポイント数

        コイル電流により必要な冷却水流量が決まりますがコイルが長くなると

  配管抵抗から十分に冷却水が流れなくなります、この対策としてコイルを

  分割して冷却水経路を複数設けて流量を賄います。

5.コイル電圧の抑制

        コイル巻き数が多い場合や周波数が高い場合はコイル両端の電圧が高くなります。  

  放電や漏電の危険を考慮する必要が出てきます。

  真空中での放電現象も考慮する必要が有ります。

6.コイル絶縁方法

        コイル自身のショートや被加熱物との接触を考慮してコイルは絶縁処理を行います

  この方法は多種ありコイルの価格に大きく影響します。

  ただし、サンプル実験では一般的にコイルの絶縁は無視されます。

  実機の設計で考慮されますが、コイル電圧等の情報や加熱環境を鑑みて

  予め想定すべきです。


これらを考慮しながらコイルの形状を決めていきます。

加熱パターンなどは一定の傾向や物理的な法則がありますが 実際の調整は経験値です。加熱コイルは条件に合わせ作り直しの試行錯誤します。

設備用の加熱コイルも含め一般的に加熱コイルは手作りです。

従って、同じ仕様のコイルでも複数製作すると完全に同じとは成りにくい物なので

予め主要なポイントを決めておくなどの品質管理が必要です。


 周波数を変更するのはコイルを含む共振回路を全体で見直す必要があるので

大変な作業です。よく周波数を変える事を無線機の周波数を変えるかのように思われがちですが、大電流なので実際は共振回路全体の共振パラメータで周波数を調整します。

コンデンサによっては一個数キロの物もありこれを組み替えて整えます。


 机上計算で200kWなど 大出力が必要でサンプル実験設備で対応できないケースでは発振器の出力は20kWとして加熱時間を机上計算の10倍とするなど工夫します。


 サンプル実験で得られたデータは気温や湿度の影響を受けやすく場合によっては被加熱物の個体特異が結果に影響する事が有ることにも注意が必要です。

たまたま上手く行ったデータを”チャンピオンデータ”と呼びます。


 サンプル実験は準備や実験に時間が掛かることから数ヶ月の順番待ちに成ることが

多いです。計画にゆとりが必要なことを考慮して下さい。


コイルの形状や共振回路のパラメーター(周波数、コイル電流、等)が決まると

設備用の設計がスタートします。

熱量が算出できたら

サンプル実験

公式や数式を入力すると式を解析して

逆算や穴埋め計算する事が出来ます。

答えから式の構成要素を逆算するので

公式を逆展開するといった面倒が有りません

工場や現場でノートを使いづらい場合でも簡単に最計算できることも特徴です。

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